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文化と文明3(現代社会の教育) -なぜ・なにを・どう学ぶのか-

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2-3.現代社会の教育

日本において高校までは、習った知識がどこで生まれ、どのような考えを持った人たちによって生み出されたかを学ぶ機会は非常に少ないかと思います。しかし、知識を深く理解し、それを発展させていくには、その背景を知る必要があります。西洋文明の大きな源流がギリシャ文明とキリスト教にあると言いましたが、異質な両者がどのように絡まり合い、反発し、支えられながら、西洋文明を育んでいったかは、その功罪と共に非常に複雑で興味深い歴史でもあります。その歴史を知ることは現代社会、現代日本の多くを知ることとも言えます。

日本の高校までの教育によると、知識の深堀をせずに教科書に書かれた知識や大学受験で問われる知識を鵜呑みにして、あまり根拠の検証もせずに、皆が知らなければならない知識かのように、世の中に出て最も役に立つ知識かのように、それ以外に考え方はないかのように錯覚してしまっている学生を多く見聞します。少なくとも、2010年代の今日まではそう感じています。たしかに、大学受験は、そのように思い込んだ学生の方が、科挙の試験のように、思考力を養うよりも知識の習熟を優先させることで、効率的に点数を取ることができるかもしれません。

しかし、本来、学問というものは、曖昧で漠たる対象から、自らが感じた興味や関心、疑問を大切にして、様々な視点からあれやこれやと吟味と整理を繰り返しながら、やっと理解し、発見することのできる、手間と時間のかかる作業なのだと思います。それを窮屈な競争原理のみにのせれば、画一的で融通の利かない学生を育てがちになってしまいます。逆に、一人ひとりの興味や関心、疑問に合わせて、つまり、各人の個性を尊重して、時間をかけて知識を議論や資料などで検証・確認しながら学ぶようにすれば、多様で柔軟な能力を持ち、創造性の豊かな学生を育てることができると思います。たしかに、そのような学生は大学受験のように、定まった範囲の知識の習熟度を問う競争の中では、知識の習熟を優先させてきた学生よりも一見、能力的に劣るように見えるかもしれません。しかし、思考力が付けば理解力も上がり、したがって学習効率も良くなり、知識の習熟だけに熱心に取り組むよりも、後からかえって知識の習熟が早く深くなる場合も多くあります。何より、新たな分野に取り組む能力や新たな分野を開拓していく能力に差が生じてきます。

現代においては、社会に出ると、ある程度の目標が定まった競争の中で成果を出すことを求められる場面もあれば、時にその目標を、良い目標を探し出すことを求められることもあり、あるいは、できることならば自ら新たな目標を求めた方が良い場面にも出くわします。前者の限られた目標の中での仕事は、仕事の効率や量がより必要とされますが、後者の良い目標を探すことから始まる仕事は、創意工夫、個性や感性がより必要になります。さらに、後者の方が漠たる複雑な対象を扱うため、観察力、論理力、つまり思考力がより必要とされます。他者に新しいことを理解してもらうために、より豊かな表現力も必要となるかもしれません。限られた目標や仕事を競争して奪い合うよりも、各々が仮に苦労は多く利益は少なくとも、新たな仕事を開拓できた方が、個人としても幸せであると思いますし、集団としても平和で豊かになれるのではないかと感じています。そのためには、やはり、各人がより困難なことを行えるだけの多様で柔軟な思考力を身に付けられる教育が、現代においては必要になっているのではないかと思います。

したがって、時に応じて、自分の興味を持った学問の歴史をたどり、深堀してみると良いと思います。すると、自ずと西洋文明の過去も多かれ少なかれ知ることになります。次第に知識が分野を越えて横に繋がり、様々な学問の全体像も見えてくるかと思います。一つ、科学史をその導入として学ぶと応用も広く、役立つことも多いかと思います。ここでは、村上陽一郎先生の著作をお勧めします。昔から西洋の高等教育では、教養課程をリベラル・アーツと呼び、ギリシャで言うところの自由市民、現代社会における一般市民が持つべき教養、つまり、自らの自由をよりよく生かすための知識や技術を学びます。それは同時に、現代社会の文明の要となる知識でもあり、次章では、その要になると思われる知識、学問を選んでより具体的に説明していきたいと思います。

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公開日時:2016年8月31日
最終修正日:2018年1月8日