道徳と宗教6(各宗教の概説) -なぜ・なにを・どう学ぶのか-

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1-3‐3.各宗教の概説

最後に各宗教について、概説します。世界には多様な宗教、宗派があり、そのすべてを取り上げることはもちろんできませんし、その能力も私にはありません。以下に例示する宗教は、信者数や国際社会、日本社会における存在感、主観的な教義への共感をもとに選択して並べたものです。

1-3‐3‐1.キリスト教

世界三大宗教の一つで、世界で最も信者数の多い宗教です。中東パレスチナから発祥し、その教義の普遍性からヨーロッパ、アメリカ、全世界に広がりました。ユダヤ教から派生した宗教で、ユダヤ教には、元々、救世主が現れるという預言があり、ユダヤに生まれたイエスがその救世主として神様の教えを人々に伝えたという信仰を持ちます。キリストとは、救世主と同義で世の中の苦しむ人々を救う方という意味があります。教典は新・旧約聖書で、旧約聖書はユダヤ教の聖典であり、キリスト以前に結ばれた神様との旧い契約を意味し、新約聖書は主にキリストの教えを伝える教典で、キリストによって結ばれた神様との新しい契約という意味を持ちます。

1-3‐3‐2.仏教

世界三大宗教の一つで、インド北部から発祥し、その教義の普遍性からアジア全域に広がりました。釈迦族の王子シッダールタが俗世を捨てた修行によって悟りを開き、仏(ブッダ)としてその教えを説いたという信仰を持ちます。仏とは、真理の悟りを開いた方という意味で、その教えによって人々を苦しみから救う方とされます。経典は多岐に渡りますが、主に仏が説いた教えとして書かれています。

1-3‐3‐3.神道

日本の民族宗教で、自然崇拝、祖先崇拝を基本としてそれらに神様を見い出し、尊崇の対象とする多神教の宗教です。太陽神の天照大御神を天皇家と日本人の祖とし、国造りの神話や天皇家の神話が古事記にまとめられています。時代ごとに様々な教えをもった宗派も現われ、とくに幕末・明治期に盛んに成立しました。

1-3‐3‐4.イスラム教

世界三大宗教の一つで、中東アラビア半島中西部から発祥し、その教義の普遍性から中東、北アフリカ、中央・南・東南アジアに広がりました。メッカに生まれたムハンマドが、神様から預言を受け、つまり、神様から教えを預かり、人々に伝えたという信仰を持ちます。ユダヤ教とキリスト教を継承する系譜の宗教で、ユダヤ教の預言者やキリスト教のイエスを救世主として受け入れつつ、ムハンマドを最も偉大な最後の預言者として信仰します。教典はムハンマドの教えを伝えるコーランを中心とします。

1-3‐3‐5.ユダヤ教

中東パレスチナに住んでいたユダヤ人の民族宗教で、唯一の神様を信仰する一神教です。神様の教えを預言者たちが人々に伝えるという信仰を持ちます。預言者とは、神様の教えを預かった者の呼称です。教典は聖書(キリスト教では旧約聖書)で、世界の創造神話、ユダヤ民族の歴史書、預言者たちの教え預言書などからなります。

1-3‐3‐6.儒教

中国から発祥し、東アジアに広まりました。中国、現在の山東省周辺に生まれた孔子の教えを道徳・倫理の規範とします。信仰的色合いが薄く、東アジアでは長く政治思想として採用され、その理解が官吏の登用基準とされたこともあり、学問として捉えることもあります。東アジアの道徳観に多大な影響を与えています。経典は、孔子の教えを伝える論語を中心とします。

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公開日時:2016年8月25日
最終修正日:2018年1月6日